ハチの気まぐれ

5月1日に咲きはじめたりんごの花は、5~7日にかけて中心花が満開を迎えました。

いまは8割以上の花が落ち、結実した小さなりんごが育ちはじめているところです。


この10日間程は、授粉作業や摘花(よぶんな花を落とす)作業のタイミングを計るため、

園地ごとの開花状況、天気予報とにらめっとしながらの毎日でした。

1年の中でも、かなり集中が必要な時期のように思います。

この時期の貴重な助っ人が、ハチです。

りんごの花は、受粉して実をつけるために、他の品種の花粉を必要とします。

そこで、いろんな品種をとびまわるハチが、りんごの受粉を手助けしてくれるのです。

当農園では、野生のミツバチと、飼育しているマメコバチが戦力になっています。

マメコバチは、さなぎを写真のような箱に入れて、ふ化するのを待ちます。

箱に刺さっているのは、巣に使われるのと同じ、ヨシです。

ふ化したハチが、ヨシを通って外の世界に出ることで、またヨシの巣に戻ってくるのだそうです。

さなぎの入った箱と、ヨシの束をセットにして、巣箱に置いてやります。

巣箱は、使わなくなった昔のりんご箱(木製)を日曜大工してつくりました。

たまに、こういう大工仕事をするのは楽しいものです。

鳥よけの網や、ハチの巣づくりに必要な泥をためる穴も用意します。

気温にもよりますが、4~5日くらいでハチが外に出てきます。

手を止めて見ていると、結構かわいいものです。

もう数日すると、本格的に仕事(授粉)をはじめてくれます。

ただし、ハチには弱点があります。

マメコバチは寒さに弱く(北風が強いとステイホーム)、ミツバチは移り気(白いりんごの花よりも、黄色いタンポポが好き)なのです。

また、一度に5つ咲く花のうち、中心花と呼ばれる中央の花が肝心なのですが、ハチは花粉があればお構いなしです。


そこで、人の手による授粉(人工授粉)も行っています。

梵天(ぼんてん)という、耳かきのふさふさのようなものに、花粉をつけて実施します。

鳥の羽根も使いますが、梵天の方が仕事が細かい分、効果は高いようです。

りんごの実に、しっかりと5つの種を入れてやる(受粉がうまくできないと数が不足)のが目的です。

ただ、限られた日数で手間のかかる作業なので、なかなかすべての畑は回れないです。

人の手が、足りないときの、ハチ頼み。

気まぐれなハチの働きに期待を寄せて、結実の状況を見守ります。

やなぎさわりんご農園

北信州の自然の恵み